腕時計に重要なバネ棒とは

腕時計のパーツに「バネ棒」というものがあることをご存知でしょうか。もし知らないという方がいれば、バンドを取り替える機会にでもどの部分にあるのかを確認してみるとよいでしょう。バネ棒と一口にいっても時計の種類によって長さや形状が異なります。バネ棒がどのような役割をするものなのかを理解したうえで、正しい扱い方を覚えておくことをおすすめします。ここでは、腕時計を陰で支えているバネ棒に焦点をあてて解説していきます。

時計バンドの交換に重要なバネ棒とは

バネ棒とは腕時計本体とバンド部分をつなげる役割をする金具のことで、スプリングバーとも呼ばれます。一般的な腕時計は、裏返して本体とバンドのつなぎ目部分をよく見てみると、バンドの付け根が筒状になっています。腕時計のバンドは、端にあるかん穴という筒の部分に細長い棒状の金具を差し込み、両端の出っ張った部分を本体に引っ掛ける形で固定するからです。このときにバンドと時計本体をつなぐのに使われる棒状の金具がバネ棒です。バネ棒を使ってバンドを取り付けるタイプの腕時計には、時計本体にラグと呼ばれる切れ込みがあり、棒が収まるすき間が作られています。もしもラグのすき間とバネ棒の長さがちょうど同じかそれ以下の場合にはバンドを時計本体に固定することはできませんし、逆にラグの幅よりも棒が長いときにはラグに棒が入らなくなってしまいます。そこで、棒にラグの幅よりも長い部分を作ったうえで、両端にバネを入れ、ラグにフィットさせられるようにしたものがバネ棒です。長さや形状の異なるものが多数あるので、ピッタリの長さや形のバネ棒を使って固定するのが基本です。

watchmaker workshop – bar and spring removing tool for watch strap and wristband isolated on white background

バネ棒の種類はいろいろ

腕時計は用途やデザインによってラグの幅やバンドの幅が異なるため、それぞれの幅に合わせられるように、長さや太さの異なるバネ棒がたくさんあります。長さや太さが同じでも両端の形状が異なるものもあるので、バネ棒はそれぞれの時計にジャストフィットするものを選んで使わなければなりません。バネ棒を大きく分けると、ダイバーウォッチ用の太いものと、一般的なバンドを取り付けるためのもの、金属製のバックルのパーツ同士をつなげるためのもの、時代の古い時計に見られる太くて短いものなどに分けられます。また、バネ棒の両端が引っ込んだときに一定の位置で止まるようにつばがついているタイプとつばがついていないタイプがあります。つばがついているタイプも両側に1個ずつ付いているもの、両側に2個ずつ付いているもの、片側にしかついていないものなど種類が豊富です。なかには棒の部分が軽くカーブしているものや凹凸があるもの、片側に取っ手や窓がついたものまであります。高級ブランドの時計は機種ごとに異なるバネ棒を使っていることもありますから、バネ棒を探すときは、用途、直径、長さ、形状をしっかり確認するようにしましょう。

バネ棒を取り外すときは

バネ棒を外すときには専用のバネ棒外しという工具を使います。バネ棒の外し方は、ケースの側面に穴がある場合とない場合、フィットパーツ付きの場合などで多少やり方が異なります。しかし、基本的には時計本体の穴からバネ棒外しを使ってバネ棒を外し、新しいバンドにバネ棒を通し直して本体につなげるという形で作業を行います。ケースの側面に穴がある場合には、ケースの穴にI型のバネ棒外しを差し込み、下に押し込んでバネ棒を外します。外したバネ棒を新しいバンドにセットしてから、本体の穴に片方ずつ差し込んで取り付けるのが一般的です。一方、ケースの側面に穴がない場合には、Y型のバネ棒外しを用意し、ラグとバンドの側面のすき間に差し込んでバンド側に押し込みます。そうするとバネ棒が外れるので、新しいバンドの穴にバネ棒を差し込み、ラグの内側にある穴に棒を押し込むようにしてセットします。なお、フィットパーツが使われている場合は、ラグのすき間に工具を差し入れてフィットパーツごと取り外し、その後でフィットパーツのピンを外してバンドを取り替えます。

バネ棒が壊れたときの対処法

バネ棒のバネが壊れて端の部分が中に入ったまま戻らなくなってしまうと、バンドがラグにきちんと固定されなくなってしまいます。バックルの場合は中間部分の棒が折れてしまうこともあるので、そのようなときは壊れたバネ棒を取り外し、新しいバネ棒と交換しましょう。本体との接合部分のバネ棒が壊れた場合は、本体からバンドが外れてしまうことがほとんどなので、時計とバンドを分けること自体は簡単です。しかし、バンドのかん穴から壊れたバネ棒を取り出すときは、工具をうまく使って押し出さなければなりません。バンドを傷つけないように気を付けて作業しましょう。時計専門店に持ち込めばすぐに新しいバネ棒を付け直してもらえますが、個人でも十分修理可能です。どのサイズのバネ棒を取り寄せなければならないのかを調べ、正しいサイズのバネ棒を注文したら、到着を待ってかん穴に通し、元どおりの位置に取り付けるだけです。革製のバンドや金属のバックルの穴の中に錆が溜まっている場合は軽くサビを取り除いた後で新しいバネ棒を通してセットするようにしましょう。

バネ棒を購入するときの注意点とは

バネ棒は太さや長さ、形状などの種類が多いので、バネ棒のサイズを正しく選んで購入することが大事です。まず長さですが、バネ棒の長さとして表示されているのはバネ棒の全長ではありません。端が押し込まれた状態の長さです。端につばが付いているものは本体に取り付けているときの長さとほぼ同じになりますが、つばのないものは両端を押し込んだときの長さを測ります。太さは1.5mmが一般的ですが、防水加工されたものには1.78mmや2mmのものも使われていますし、完全防水のダイバーウォッチともなると2.5mmもある極太のバネ棒が使われていることもあります。金属のバックル部分のバネ棒は1mmもしくは1.3mmという太さです。太さがわからない場合には工具を使って正確な直径を測ってから注文するか、専門店に実物を見せて合うものを選んでもらうとよいでしょう。特殊形状のバネ棒はバネ棒を専門に扱う時計部品の専門店やメーカーを通じてしか購入できないため、時計専門店に持ち込んでもバネ棒が取り寄せになるケースがほとんどです。古いものだと手に入らないこともあるため、特殊形状のバネ棒の取り外しは慎重に行うようにしましょう。