直接身につけて使う腕時計は、屋外で使用する機会が多いこともあって、汗や汚れが付きやすいのが難点です。長持ちさせるためにはこまめなお手入れが欠かせません。お手入れせずに使い続けたら本体やバンドの劣化がどんどん進んでしまいますから、汚れやすい部分だけでもこまめに掃除するようにしましょう。プロに任せる本格的なメンテナンス以上に、日頃行う簡単なお手入れが大事です。ここでは、腕時計のメンテナンスについて解説します。
腕時計のメンテナンスの重要性を理解しよう
よい腕時計は長く使い続けても正確に時を刻みます。それは優れた職人が作った時計だからというだけでなく、使う人が日頃まめに手入れをしながら動作を確認し、よい状態を維持しているからです。どんな高級時計でも使うことによって素材や部品の劣化が始まります。ですから、高い性能を維持し続けるためには、劣化をできるだけ遅らせ、早めに悪くなった部品を交換しなければなりません。いくら高級時計を購入しても、一切メンテナンスを行わずに使い続けていたら、錆びや磁気などの影響で少しずつ狂い、元の性能を維持できなくなってしまいます。美しい状態を保つためには、腕時計についた汗や汚れを柔らかい布などで拭きとることが大事です。数年に1度はプロにオーバーホールを依頼して、時計をパーツごとに分解して点検をしてもらいましょう。悪くなった部品を交換したら洗浄し、元通りに組み立てて、新しい油を注油します。高級時計ほど細かい部品に分解でき、悪くなった部品だけを交換して性能を取り戻せます。どんな時計も、大切に扱えばその分長持ちします。毎日簡単なお手入れをしながら性能を維持することが大事です。
日頃からできるメンテナンス方法とは
時計のメンテナンスというと「精密機械を触ることなど素人には無理」と拒否反応を起こす人がいるかもしれません。しかし、日頃のメンテナンスでしなければならないことは、美しい状態を保つための掃除です。ステンレスは錆びないと思い込んでいる人も多いようですが、実はステンレスも錆びにくいだけで、悪い条件が続けば錆びてしまいます。日頃のメンテナンスは、錆びができやすくなる条件を取り除くためのもので、腕時計に付着した皮脂や汗を拭きとる作業が中心です。5~10分程度のお手入れで済むので、1週間に1回程度は時計を外したときに行う癖をつけておきましょう。用意するものは柔らかく毛羽がたちにくいクロスとつまようじです。最初にケースやガラス面をクロスで磨きます。指の腹を使ってやさしく押すように拭いてください。硬い汚れが付いたまま強くこすらないように注意します。次に裏ぶたの溝に入り込んだ汚れをつまようじの先で掻き出します。最後に全体をクロスで磨けば完了です。数回に1回はリューズやベゼルなどの稼働を確かめ、潤滑油が固まるのを防ぐことも大事です。
色落ちや変色を防ぐ!レザーバンドのメンテナンス方法
レザーバンドは汗や直射日光、水などに弱いので、お手入れ次第で大きな差が出ます。メンテナンスをせずに放置していると、早い時期から色落ちや変色などが目立つようになります。白やベージュなど色の薄いレザーバンドほど汚れが目立つので要注意です。汗や水が付いたら、そのたびに柔らかく吸水性のよい布で素早く拭き取るようにします。こすらずに水を吸わせるように軽く拭くのがコツです。強くこすると色が落ちたり光沢がなくなったりします。湿った状態が続くと染料が袖口を汚したり、レザーバンド自体にシミができたりすることもあるので、湿気は常に気にしておいた方がよいでしょう。いくら時計本体が10気圧、20気圧の強化防水仕様になっていても、レザーバンド自体には防水性はありません。アクアフリー以外のレザーバンドは付けたまま入浴や水泳ができないと思っておいた方がよいでしょう。水仕事で水が付いたときもすぐにお手入れが必要です。腕から外して保管するときは、直射日光が当たらない涼しく風通しのよい場所に保管しましょう。レザーバンドの劣化に気づいたらできるだけ早く交換することも大事です。
錆びを防ぐ!ステンレスバンドのメンテナンス方法
ステンレスバンドでも、水や汗などが長時間付いたままだと錆びができやすくなります。ステンレスバンドは溝が多いため汚れが溜まりやすく、汚れが変質するとかぶれや袖の黄ばみの原因にもなってしまいます。錆びがひどくなるとバンドが切れる場合もあるので、定期的にメンテナンスするようにしましょう。水や汗が付いたときにはレザーバンド同様、できるだけ早く吸水性のある柔らかい布で拭き取ってください。バンドの溝は1週間に1回程度はつまようじや歯ブラシを使って汚れを掻き出します。汚れがこびりついているときは、台所用洗剤などを薄めて直接ステンレスバンドを水洗いすることもできますが、その場合は時計本体に水がかからないようにラップなどで包むようにします。防水仕様のものでも、薄めた洗剤液を想定した機能ではないので、本体ごと浸けてしまうことはおすすめできません。水洗いした後はよくすすぎ、水分を残さないようにしっかり乾かします。すき間に水分が残ると、ピンやバネ棒が錆びてしまいます。水気が残らないように十分注意しましょう。
プロにメンテナンスを任せることも大事
プロに任せるメンテナンスの中心はオーバーホールです。細かい部品にまで分解した後、部品をすべて洗浄し、劣化している部品を取り替えた後元に戻すのが一連の流れです。オーバーホールが必要なのは高級な機械時計だけだと思いがちですが、クォーツ時計でもオーバーホールが必要になる場合があります。電池交換の機会などに簡単なメンテナンスをお願いして、状態をチェックしてもらうとよいでしょう。素人目には劣化に気づきにくい部品もプロであれば替えどきがわかります。劣化しているようであれば交換してもらえますし、バンドに問題がある場合にはバンドの交換をおすすめされるはずです。日頃のお手入れ方法がよくないと感じたら、お手入れ方法を教えてくれるかもしれません。高級腕時計は本体が高いうえにオーバーホール代も高いと思っている人が多いようですが、実は違います。きちんと手入れをすれば子や孫の世代まで受け継いで使えるので、長い目で見ればお得な買い物になります。よい時計をよい状態で使い続けたければメンテナンスをしっかり行うようにしましょう。