腕時計のオーバーホールをする理由

「オーバーホール」という言葉を知っていますか。多くの腕時計の取扱説明書に「定期的にオーバーホールに出してください」と記載してあるので、言葉だけは知っているという人もいるでしょう。故障した際の修理と混同されがちですが、実は不具合とは関係なく腕時計は定期的にオーバーホールに出す必要があります。なぜなら、定期的にオーバーホールをすることで腕時計をより長く使用することができるからです。今回は、オーバーホールの意味や必要性、依頼する際の相場や価格、依頼方法や目安について解説します。

オーバーホールってなに?

「オーバーホール」とは、日本語でいうと「分解掃除」という意味です。機械などを分解して徹底的に点検することを指しています。主に、車やカメラ、時計などの機械の点検をすることをオーバーホールというのです。腕時計の場合、次のような手順でオーバーホールを行います。 1.分解(腕時計の蓋を開けて、ゼンマイなどの部品を分解します) 2.パーツの洗浄(分解したパーツを専用の洗浄器を使って洗浄します) 3.分解したパーツの組立(分解したパーツを時計の内部に戻して組み立てます) 4.注油(機械が正常に動くように専用の機械油を注油します) 5.タイミングの調整(きちんと正しい時刻や日時を表示するように調整します) 6.外装の磨き(削れてしまった時計の表面を新品のように磨き上げます) オーバーホールは腕時計の修理とは異なり、故障する前にこれらの手入れをするのが特徴です。

watchmaker workshop – watch repairing tools on white background

オーバーホールが必要な理由

なぜオーバーホールを行うのかというと、定期的に点検することで腕時計をより長く使用できるからです。たとえば、腕時計に不具合が出てから修理に出した場合、高額な修理代がかかったり買い換える必要があったりと結果的に大きな出費につながることがあります。定期的にオーバーホールに出して腕時計に異常がないかをプロにチェックしてもらうことで致命的な故障などが起こる前に不具合を発見して手を打てるので、結果的に経済的といえるでしょう。つまり、オーバーホールは人でいうところの「人間ドック」のような役割を果たすものなのです。もし、価格が安くて「壊れたら新しいものを買えばいい」と思っている腕時計ならオーバーホールは必要ないかもしれません。しかし、高価な腕時計や大事に使いたい腕時計の場合は、ぜひ定期的にオーバーホールに出してメンテナンスすることをオススメします。

watchmaker workshop – open used wristwatch fixed in plastic holder for service

オーバーホールの相場

オーバーホールに出す腕時計は大きく「クォーツ時計」と「機械式時計」に分けることができます。一般的に、クォーツ時計よりも機械式時計の方がオーバーホールの費用が高額です。クォーツ時計の場合、スタンダードな機能の時計かストップウォッチ機能がある「クロノグラフ」なのかどうかで相場が異なります。スタンダードな機能の時計は8,000〜2万円台、クロノグラフは1万5,000〜3万円台くらいが目安です。そして、機械式時計の場合は「手巻き」「自動巻き」「クロノグラフ」の3つで相場が異なります。手巻き式で2万〜4万円台、自動巻きで2万〜5万円台、クロノグラフで3万円台後半〜8万円台が目安と考えておいてください。(※1)また、オーバーホールは正規のメーカーもしくは時計店で対応してくれますが、どちらに依頼するかでオーバーホールの価格は変わってきます。メーカーは価格が高い傾向がありますが、純正のパーツなどが揃っていて対応も手厚いので安心してオーバーホールに出すことができます。その一方、時計店はメーカーよりも安価なことが多いですが、部品の品揃えやオーバーホールの技術がお店によって異なるため、どのお店に頼むかを見極める必要があります。自分の予算と相談しつつ、メーカーと時計店のどちらにオーバーホールを依頼するかを決めるといいでしょう。

オーバーホールをお願いするには

オーバーホールを依頼するには「腕時計を直接店頭へ持っていく」「腕時計を郵送する」という2つの方法があります。腕時計を直接店頭へ持っていく場合、まずはお店に腕時計を預けます。お店側で腕時計の症状を確認した上で後日見積書を提出してくれるので、価格に問題がなければオーバーホールを依頼しましょう。オーバーホールが完了したらお店から連絡がくるので腕時計を受け取りに行ってください。腕時計を郵送する場合は、メーカーや時計店によって段取りが異なります。一般的に時計店に連絡を入れてから郵送しますが、お店によっては事前に時計の写真を送ったり、何か気になる症状についてヒアリングがあったりするので事前に確認しましょう。また、その時点で概算の見積書を提出される場合もあります。時計を郵送したら時計の状態を確認した上で見積書が提出されるので、価格を確認してオーバーホールを依頼するかを決めましょう。オーバーホールが完了したら腕時計が郵送で手元に戻ってきます。

オーバーホールをする周期

オーバーホールの周期は、メーカーや時計店によって推奨時期が違います。「3年に1度」「5年に1度」「10年に1度」などさまざまな情報があるので、迷ってしまうかもしれません。参考までに、本記事では最低でも5年に1度はオーバーホールに出すことをオススメします。なぜ5年に1度かというと、潤滑油が劣化したり、時計内のパーツが磨耗したりといった症状が出始めるのがおおむね5年程度だからです。実際には、これらの症状が出る時期は腕時計の品質によって異なります。たとえば、ロレックスのような高級腕時計の場合、5年以上オーバーホールに出していなくても問題なく動いてくれることもあります。しかし、オーバーホールは修理ではなく、あくまでも故障などを予防するための分解掃除です。ましてや、高級な腕時計なら本格的に故障してからでは高額な修理費が必要になる可能性もあります。そんな事態にならないように、仮に腕時計に不具合がなくても、故障を予防するという意味で5年に1度はオーバーホールに出すといいでしょう。

これが目安!こんなときはオーバーホールを

オーバーホールは腕時計に不具合が出る前に依頼するのが基本ですが、次のような症状に気付いた場合はすみやかにオーバーホールを依頼しましょう。まずは、「腕時計の時間のズレが大きくなったとき」です。時刻や日付が正しく表示されない場合は、潤滑油の汚れや油切れが原因で歯車が上手く動いていない可能性があります。目安として、10〜15秒程度のズレが生じている場合はオーバーホールを検討する時期と考えてください。次に、「ゼンマイの持続時間が短くなったとき」が挙げられます。この症状も時計内の潤滑油に問題がある場合に起こるものです。一般的に機械式時計は一度ゼンマイを巻くと40時間程度は動き続けますが、潤滑油が汚れたり油切れしたりすると、24時間も保たなくなる可能性があります。もし、1日腕時計をつけていて途中で止まってしまうことがあったら早めにオーバーホールに出した方がいいでしょう。