定番機械式からタッチスクリーンまで、老舗時計ブランド、ティソの魅力

160年以上もの歴史を持つ、スイス発祥の老舗時計ブランドティソ(Tissot)。ティソの時計は、クラシカルでオーセンティックな機械式時計から、多機能満載なTタッチシリーズまで抱える多種多様な陣容です。古くより精巧さ、デザイン、価格のバランスを追い求める姿勢は、今なおもって、多くの愛好者に親しまれています。ファッションアイテムのガイドともなっているインスタグラムでも多くの投稿がなされ、その一端を垣間見ることができます。

ティソ、160年の歴史をもつスイス生まれの老舗時計ブランド

携帯電話やスマートフォンが普及し、至る所で時間を確認できる現在では、腕時計を身につける人も減りました。それでも高級腕時計や名門ブランドの時計は、ファッション性の高さや、ステータスアイコン的な位置づけを失ってはいません。

今回紹介するティソもまたそうした老舗時計ブランドです。その歴史は、なんと1853年にまで遡ります。高級腕時計の本場スイスはル・ロックルにて、エタブリサージュという組立て製造システムを採用し、創業されました。

ティソは、高機能、デザイン性、価格のバランスで評価される時計ブランドとして認知されています。その源流は、創業間もない頃から見受けられます。20世紀初頭には、アールヌーボ、アールデコといった流行のデザインに対応してきました。同じく20世紀初頭には、耐磁性腕時計を世界で初めて市場に送り出すなど、機能性の高い腕時計作りを追求してきました。

伝統から最新技術まで、裾野の広いティソ時計

現在のティソの時計にもそうした機能とデザインを追求する姿勢は生き続けています。現在のティソの主力シリーズであるTタッチシリーズは、その真骨頂とも言えるでしょう。天候予測、高度計、標高差表示機能、コンパス、カウントダウンタイマーなどの機能をこれでもかとひとつの腕時計に詰め込み、それら機能をタッチスクリーン方式で切り替えることが可能です。

Tタッチシリーズは、ムーブメントもソーラークオーツです。すなわち、太陽の光が動力源。たった15分間の太陽光で1日分の充電ができ、約1週間フル充電すれば、約1年間パワーリザーブが可能になるエネルギー効率の良いムーブメントです。

こうした最新技術の粋を集めたTタッチシリーズは、ティソの顔ではありますが、ティソのもうひとつの顔は、オーセンティックで、クラシカル、そしてトラディショナルな腕時計です。

代表的なものは、『ル・ロックル パワーマティック 80』に見られるようなクラシカルな機械式腕時計。1853年にティソが創業した町であり、今も本社をおく、「ル・ロックル」にちなみ命名された腕時計です。クオーツではなく、電池いらずのオートマティック(自動巻き)を採用した、伝統的で格調高い、老舗腕時計ブランドらしいスタイルになっています。

ちなみに、この『ティソ ル・ロックル』は、オートマティックのモデルを今のパワーマティック80に変更する以前からのベストセラー品です。まさに、ティソの顔中の顔です。このパワーマティック80は、約80時間の連続駆動を実現したムーブメントです。一般的なオートマティックは、約40時間程度と言われていますから、その倍。オートマティックにありがちな、着用せずにほうっておいたら、止まっていたという事態が格段に減少するわけです。

さらに、ティソにはまだまだ多くの顔があります。ヘリテージシリーズに見られるように、過去の自社名品をモチーフとし、デザイン性の高い腕時計をリファインして世に送り続けています。

このように、ティソの腕時計のラインナップは、非常に裾野が広くなっています。Tタッチシリーズのような最新技術。ティソ ル・ロックルに見られる精巧な機械式腕時計。ヘリテージシリーズに見られるアンティークなデザイン性の高い腕時計まで。多機能、精巧さ、クラシカルながら高いデザイン性、特色盛りだくさんこそティソらしさです。

 ティソの時計はなぜ人気?

ティソは、時計王国スイスの老舗名門ブランドです。クオーツだけではなく、自動巻のオートマティックが製品の多くをしめ、その質、デザインも申し分ありません。こうした、品質の高い名門時計のブランドと言えば、100万円以上なんて、ざらの世界です。むしろ、高品質でデザイン性の高い、高額な時計を身につけることがステータス。そんな世界がブランド時計なのです。

そんな世界にあって、ティソの時計は安いのです。この安さこそ、ティソの最大の魅力であり、人気の秘密です。機械式時計の精巧さでは、他の名門時計ブランドとひけをとらない時計が、比較的リーズナブルな価格で手に入る、これこそティソなのです。

 高機能多機能なTタッチシリーズでも、10万円代が中心になり、ヴィンテージと銘打ったティソのなかでは高額な部類に入る時計でも30万円代と言う安さなのです。それでいて品質は劣らない。これこそティソの時計が人気な理由です。

しかし、少し触れたように、高額・高品質・高いデザイン性と全て揃ったブランド時計を身につけることがブランド時計愛好者のステータスでもあり、魅力のひとつでもあります。安いとその分、低く見られるのがブランドものの世界です。このティソが、その品質、歴史に比して、少し知名度が落ちるのもここに由来するかもしれません。

ただ、このティソの時計、安いのにすごいんです。何がすごいって、やはり時計の本場スイス生まれの老舗メーカーなのです。こうした時計メーカーは、クオーツだけではなく、自動巻き、手巻きなどの機械式時計にも力を割き、愛好者も好んで、そちらを身につけます。このクオリティこそ、時計メーカーの技術力であり、愛好者が見るポイントです。

電子的な構造を持ち、ボタン電池で動くクオーツは、その構造からして、電池が切れない限りほうっておいても針は動きを止めることはありませんし、時間のズレも、ほとんど起きません。さらに、工場での大量生産品であるため、相対的に価格が安くなっています。

それに対して、自動巻き、手巻きなどの機械式時計は、ぜんまいを動力とした昔ながらの機械仕掛けです。手巻きは正に、そのぜんまいを手で巻き、自動巻きは腕に身につけて振ることで、ぜんまいが巻き上げられる仕組みです。放置しておくと、止まってしまい、誤差もクオーツに比べ、出やすいのが現実です。

つまり、クオーツに比べ手間暇の掛かるのが機械式腕時計です。価格も時計職人が腕によりを掛けて生産しているために、相対的に高価格になることが多くなります。そのムーブメント構造の品質が高ければ高いほど、時間のズレも小さくなり、単純に高額になるのが通例です。

こうした世界のなかで、その機械式腕時計を比較的リーズナブルに提供しているのがティソなのです。さらには、ただ安いだけではありません。世界には、こうした機械式時計の品質を検定する公的機関が存在し、そのなかでもっとも権威があるとされているのがCOSC(コスク・スイスクロノメーター検定協会)で、このティソはこのCOSCで認定された機械式時計の数が多いことで知られる名門中の名門なのです。

ティソ、人気の時計は?

 今ではトレンドや流行のフロントラインとなっているインスタグラムでも、多くのティソ愛好家が時計の写真をアップロードしています。日本での“#ティソ”の投稿件数は、少し見劣りする数ではありますが、世界での”#tissot”の投稿件数は、さすがの世界的時計ブランドといった、堂に入った数です。

 では、具体的にティソの腕時計で人気なのは何でしょうか。そのうちのひとつが、先に紹介した「ル・ロックルパワーマティック80」です。良質な機械式時計を比較的低価格で提供することで知られるティソの代表的な時計です。クラシックで気品あるデザインのなかに、優秀なオートマティックのムーブメント構造を内蔵した時計です。これで10万円以下という優しい価格帯になっています。

ほかには、自転車競技や各種スポーツと縁のあるティソらしい逸品、ティソTレースシリーズの「T-レース サイクリング ツール・ド・フランス スペシャルエディション」です。名前の通り、ツール・ド・フランスのオフィシャルタイムキーパーを務めたことにちなんだレース仕様の、非常に機能的で現代的な腕時計です。なんと、こちらも6万円代の比較的お安い価格帯です。

 精巧で低価格なスイス製時計ブランド、ティソ

 得てして、重々しくて華美、高額な上に時間がずれやすく、手間暇かかるイメージなのが、ブランド機械式時計です。そのなかにあって、ティソは異彩を放った老舗時計ブランドです。比較的低価格、シンプルでオーソドックスなデザインが中心、そして、お墨付きの精巧なムーブメント。伝統と革新、機能性とデザイン性、名門らしからぬ謙虚な価格帯、これこそティソの本質です。