アーティスティックかつ素朴なアニエスベーは、腕時計もらしいアイテム

フランス生まれのファッションブランド、アニエスベー。そのフィールドは、服、バッグ、小物、時計などのファッションアイテムにとどまらず、カフェ、アートギャラリーなどを多方面にわたり展開してきました。スタイリッシュで軽妙、かつ、アーティスティックなデザインは、活動全体のアニエスベーのスタイルであり、それは時計にも息づいています。シンプルで視認性に優れた、アニエスベー然としたデザインに、セイコーのムーブメントを内包したアニエスベーの腕時計は、アニエスベー愛好者以外からも、一定の評価を得ています。

例の手書きロゴのブランド、アニエスベー

アニエスベーと言えば、シンプルでカジュアルなデザインのトートバッグやTシャツにタイプされた、手書きのロゴが印象的です。この手書きロゴは、アニエスベーブランドの繊細にして肩の力の抜けたカジュアルさを象徴するものです。

起源はと言えば、ブランドの創設者であるファッションデザイナー、アニエスベーが1960年代に雑誌出版社『ELLE』の編集者だった頃のライターの署名に遡ります。彼女の自然体な姿勢そのものが署名に表れ、ファッションブランドのデザインにも通じているのです。

彼女自身が設立当初を振り返り、こう言っています。「私は長い間、その時々のトレンドではなく、とてもシンプルな服、そしてそれらと組み合わせるいくつかの女性らしい服を見せる場所が欲しかったのです。私はシンプルで、少し粗野な素材、そして着心地のよい素材が大好きです」この彼女のファッションに対するフィロソフィーそのものが、アニエスベーブランドを如実に表しています。

若者の心をつかむアニエスベーの世界感

その後、彼女はファッションデザイナーとして自立を始め、1973年のブランド名登録、1975年の1号店立ち上げに至ります。ロゴやメッセージ、写真がプリントされたシンプルなTシャツ、アーティストとのコラボレーション、設立当初からの定番アイテムであるカーディガンなど、軽やかでスタイリッシュな洋服デザインを展開してきました。

その領域は洋服デザインにとどまりません。バッグ、時計、各種ファッション小物はもちろんのこと、アートや映画、そして音楽との関わりをはじめ、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争におけるサラエボ包囲にまつわる人道支援、その他社会貢献、カフェのオープンなど、多岐にわたります。

アートを中心に多くの分野から、ファッションデザイナー“アニエスベー”自身が受けたインプレッションが、デザインへと表出され、人のライフスタイル全体のデザインへと敷衍してきたのです。アニエスベー個人の“大好き”な気持ちがカタチになったのがアニエスベーブランドなのです。

このアニエスベーブランドの、シンプルにして素朴なファッションアイテムにより、アーティスティックな世界観を感じさせる手法は、長らく若者の心を掴み続けてきました。ファッションアイテムのお手頃感がデザインだけではなく、価格帯にまで波及していることにも起因しているでしょう。シンプルな手書きロゴで、彼女の“大好き”ワールドを若者に感じさせているのがアニエスベーブランドです。

アニエスベーらしさを感じる腕時計

さて、アニエスベーは時計も手掛けており、その時計もアニエスベー的なスタイリッシュさを感じさせるアイテムとして一定の人気を博しています。このアニエスベーの時計、アニエスベーファン以外からも支持されている人気アイテムになっています。理由は簡単です。アニエスベーらしいシンプルかつ、おしゃれなファッションアイテムとしての評価、内蔵されたセイコー製ムーブメントによる機能性への安心感、そしてなにより決して高くはないお手頃価格感からです。

アニエスベーと言えば、どのアイテムも、シンプルでさりげなくスタイリッシュなデザインが主流です。ファンはその向こう側に、エスプリの効いたアーティスティックな世界を見通します。現に、アニエスベーブランドはアートや社会貢献をはじめ、多方面に展開しています。

そして、そのコアとなっているのはファッションデザイナー“アニエスベー”本人の感性です。それをファンは自然と、さりげなく、一個一個のアニエスベーアイテムから感じとっているわけです。このアニエスベーの腕時計にしても、それが言えます。文字盤に記された例の手書きロゴと、シンプルにしてスタイリッシュなデザインが、自然と装着者をアニエスベーの世界へと引き込んでくれます。

時計があらゆるデバイスや街中にあふれかえる現代だからこそ、腕時計はファッションアイテムとしての位置づけをさらに高めています。ファッションとは何か。それは手書きロゴを見て、アニエスベーに心の中で尋ねてください。

アニエスベーとセイコーの精神性が結実した腕時計

さらに、腕時計と言えば、重要なのは機能性です。時刻が簡単にあらゆる手段で確認できるからこそ、腕時計はその品質や機能性を今まで以上にないがしろにできません。そこにきて、アニエスベーが、腕時計のデザインをするにあたり、パートナーとして選んだのは、スイスの高級ブランドではなく、あのセイコーでした。

現在、世に送り出されているアニエスベーの腕時計を見れば、その根拠は明白です。スイスの高級ブランドは、全てではないにしろ、重厚にして華美な印象がぬぐいされません。それに対し、セイコーは無骨で実務的な印象はあれども、相対的に実用性やシンプルさを重視する姿勢が見受けられます。このセイコーの時計作りに対するスピリットは、決して機能性を無視しないシンプルな洋服作りのそれと通じていると言っても過言ではありません。

セイコーの「あくまで時計は見る道具だ」というモノ作りの一貫した方向性と、アニエスベーの「ファッションはアートそのものなのではなく、アートの影響を受けているものなのだ」というアニエスベーらしいエスプリは、腕時計づくりにおいてまさに合致しているのです。その気持ちが時計装着者の肌感覚と視覚に伝わり、セイコーとアニエスベーの世界へと誘うのです。

やっぱりコスパが人気の秘密、アニエスベーの腕時計

最後に価格帯です。なんと言っても、高級ブランドの腕時計はお高いものです。スイスの高級ブランド時計ともなれば、数百万円なんて珍しくない世界です。それがまたブランド時計の世界を現出する必須要素ともなっているのですから、そら恐ろしい世界です。

それに対して、アニエスベーは、もともとファッションアイテム全般、決して高額ではないのが魅力のひとつでもあります。高級すぎる印象を与えず、アーティスティックな印象を与えつつ、実用性や機能性に配慮しています。「ファッションは身につけるもの、使用するもの」という例の如くのアニエスベーのエスプリは、この比較的リーズナブルな価格帯にも表れています。

これは腕時計でも一緒です。2万円から4万円程度の腕時計が中心で、高額なものでも5万円程度です。アニエスベーの腕時計は、アーティスティックでスタイリッシュな身につける実用品なんです。これがアニエスベーの腕時計。だから、決して高くないのです。この価格帯で、アニエスベーのバックボーンを四六時中味わえるのですから。